Columnコラム
シンガポール・香港の税制について
2011 年 9 月 30 日本日はお知らせが2つほどあります。
まず、当社のクライアント社長の野瀬一成さんが
『オーナー会社の勝ち残りM&A戦略』~中央経済社
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4502689300.html
を出版されました。
このメルマガでは余り他の方の書評を行ないません。
ですが、単なるM&Aの専門書には無い読みやすさと、複雑な日本経済の
将来について、元銀行マンならではの分析に基づいた解説もあり、
「指標的」な意味合いでも読めるかと思いお勧めします。
各書店の経済欄に平積みになっていますので、お手にとって
見てみてください。
もう一つは、もうご存知の方もおられるかと思いますが、
中小機構の「経営セーフ共済」が改正になりました。
《現行 ⇒ 改正後》
〇掛け金
8万円/月 ⇒ 20万円/月
〇積立限度額
320万円 ⇒ 800万円
〇貸付限度額
3,200万円 ⇒ 8,000万円
〇申込金
必要 ⇒ 不要
節税対策(全額経費)になりますし、いざという時の貸付けもありますので、
資金繰りにも有効かと思います。
こちらも検討してみる価値はあるかと思います。
さて今日の本題ですが、
これから数回にわたって東南アジアの税制について、日本との比較を
行って行きたいと思います。
東南アジアと言っても国の数は多いので、日本企業が展開するうえで
重要とされる地域に絞ってお話します。
企業が海外展開を行う上で、営業については、マーケティングを
行ったり、仕入は商社を通したりと情報は入ってきます。
ただ、税制に関しては、会社としての法人税や間接税程度で、
オーナーに対しての個人の税金や、従業員の税金に関してなど
複合的な情報を把握している人は驚くほど少ないのが現状です。
現地の詳しい税制は改めて質問して頂ければ、と思いますが
まずは進出する国の税制を確認してみてください。
日本と同じ税制ではないため、課税対象や税目も異なりますが、
基本的な税制を日本と比較してみてください。
そのうえで、どの国に進出したら良いのか、もしくは、海外に
進出した場合、現地で税金を払ったほうが良いのか、
日本で納税した方が得なのか、その判断の一助となれば幸いです。
《シンガポールの税制》
〇所得税
日本と同じ累進課税で最高税率は20%です。
たとえば、給与所得が約1,000万円のサラリーマンの所得税は9.7%
となっています。
日本だと、所得税・住民税を合わせると、約30%ですから、
その差は歴然としています。
シンガポールに年間183日以上滞在している人は、シンガポールの
税制が適用されます。(日本の企業からシンガポールに派遣されて
きたサラリーマンの方の場合)
〇法人税
2010年より法人税率は17%となっています。
日本は今年の改正でも変わりなく実質税率は40%超なので、
これもシンガポールが有利です。
〇消費税
シンガポールでは、消費税はGST(Goods and Service Tax)と
呼ばれています。
2007年から7%の税率となっています。
〇相続税
日本の相続税は、被相続人(無くなった方)の相続財産の評価額に
対して課税されます。
シンガポールでは、相続人の取得した財産そのものに課税する
(遺産税)方式でした。
従来は約5%~10%程度の相続税が課されていましたが、2008年
以降廃止されました。
〇贈与税
もともと贈与税はありません。
相続税・贈与税が課税されないということは、個人間
(特に世代間)の資金の受け渡しは自由と言うことなります。
消費が活発になる世代へ資金が流れるため、経済の活性化に
繋がる政策です。
〇その他の税金
●配当課税
2003年より配当金は「免税」(ワンティア・システム)です。
●キャピタルゲイン課税
シンガポールは、金融商品の売買益に対する課税はありません。
日本と比較して、シンガポールは税制上は非常に有利な環境と言えます。
《香港の税制》
〇所得税
香港で所得税に該当する税金は、「給与所得税」となり、
香港に所在する企業に勤め、香港にて報酬を得る全ての
個人所得に課税されます。(給与賃金・賞与・チップ年金等)
日本と同じ17%までの累進課税と、定率で15%の選択制となって
います。
また香港での就業が60日以下の場合は所得税の対象外(免税)と
なります。
〇法人税
2010年以降の法人税は16.5%となっています。
シンガポールとほぼ同じ税率です。
〇消費税
ありません。
〇相続税
2006年以降相続税は廃止されており、死亡された方の遺産に
対する課税はありません。
〇贈与税
ありません。
〇その他の税金
●配当課税
ありません。
●キャピタルゲイン課税
ありません。
シンガポールと同じく、香港も日本と比較すると圧倒的に税制上は
有利な環境です。
これだけを見てしまうと、軸足を海外に移して・・と言う方が増えるのも
うなずけます。
ただ、やはり完全に海外に移転して日本に帰ってこないと言うことは
難しいと思います。
今後は日本と海外の両方に拠点を作りながら、節税を行っていく
スキームを作る事が重要になるかもしれません。
上記の内容で不明な点や質問がありましたらいつでもご連絡ください。