Columnコラム
不動産オーナーの節税対策 その2~会社設立のメリット・デメリット
2014 年 11 月 19 日今回は少し時間ができたためタイでメルマガを書いて来ました。
来月12月8日に東京国際フォーラムで経営者の方に対する法人税・所得税・
相続及び贈与税の節税対策セミナーを開催します。
その主催者の某企業とバンコクで打ち合わせを行ってきました。
もちろん聴衆の方々は日本国内で活躍されている経営者の方ですが、他国への
進出及びオフショアの節税対策についても興味があるとのことです。
優良な企業ほど今の日本の税制では対策を立てなければ税金をごっそりもって
行かれてしまいます。
もちろん税金は払わなければなりませんが、無駄な税金は減らして余った資金は
少しでも売上や給与を増やすために使って欲しいものです。
不動産オーナーの節税対策の第2回目は『個人で不動産を所有している時に
会社を設立した場合のメリット・デメリット』を解説します。
まず『会社を設立するメリット』をお話しします。
○個人(超過累進税率)と法人(比例税率)の税率差を活用
個人は収入が上がれば税率も上がる超過累進税率となっています。
そのため、収益性の高い不動産は親子で共有名義にするなどして所得を分散
した方が節税は効果的です。
ところが会社は法人税・地方税ともに収入に対する税率は一定です。
収入が増えていきなり税率が上がることはありません。
○役員給与を通じての所得分散
設立した会社の役員に親族を就任させることによって所得分散ができます。
○給与所得控除(概算経費)の適用
給与所得者のための経費「給与所得控除」が役員報酬にも使えます。
○生命保険の加入
個人で生命保険に加入しても、年間10万円以内の控除ですが、会社で役員対象
の生命保険に加入すると、将来の大規模修繕に備えて利益が繰り延べられます。
○オーナー個人の相続財産を増加させない
●個人の不動産オーナーに入る不動産所得を会社へ分散するため、個人の金融
資産を増加させません。
●不動産保有会社の役員は、通常は不動産オーナーの親族ですが、役員に給与
を支給することで、親族は相続税の納税資金をプールすることができます。
○会社の株式は後継者が所有する
個人の不動産オーナーに入る不動産所得を会社へ分散することにより、会社の
財産は増加します。
そのため株主は不動産オーナーではなくその親族の方が節税になります。
また会社の株価が低いうちに後継者に株式等を贈与することも効果的です。
○土地の相続税評価額は「無償返還届出書」の提出により減額
法人が建物を所有している場合、地主である不動産オーナーとの賃貸借契約では、
借地権が異動しないよう「土地の無償返還に関する届出書」を提出します。
これにより地主である不動産オーナーの相続時の土地の評価は20%の評価減と
なります。
○「小規模宅地等の減額特例」
「小規模宅地等の減額特例」とは、被相続人が居住したり、事業をしている土地
に相続税をかけて、その土地を売却することにならないよう、土地の面積の限度
を決めてその範囲内であれば50%~80%土地の評価を下げる特例です。
居住用の場合は現在は240平方メートル、平成24年1月からは330平方メートルまで80%の評価減と
なります。
○オーナーの居住用スペースを社宅とする
賃貸用建物を会社が所有する場合、オーナーの居住用スペースを役員社宅と
します。
役員は社宅家賃は払いますが、固定資産税・減価償却費・損害保険料・
借入金利息・通常必要な修繕費などは経費となります。
○会社所有の建物については相続登記の必要なし
当たり前ですが、個人で所有している建物は、相続の際に相続人への名義変更が
必要となりますが、会社所有の建物については必要ありません。
次に『会社活用のデメリット』をお話します。
○会社の設立費用がかかる
登録免許税等の設立費用がかかりますが、設立費用は会社の経費となります。
○確定申告が複雑
役員に不動産所得がある場合、会社の役員給与も加わるため、確定申告が複雑に
なりますし、会社は法人税の申告も行います。
○地方税
法人の場合には赤字であっても地方税の均等割が年間で7万円かかります。
○不動産オーナー個人の可処分所得が減少
これも当たり前ですが、会社に所得を分散するため、不動産オーナー個人の
可処分所得は減少します。
○相続発生時の土地評価では、「貸家建付地の評価減の適用」ができない
不動産オーナーの相続発生時に、土地・建物いずれも個人所有であれば、土地の
評価割合は「借地権割合×借家権割合」で減額されますが、賃貸物件を法人で
所有していると、「貸家建付地の評価減の適用」はありません。
ただし、実務上は、不動産オーナーが所有している土地の上に会社が所有する
賃借建物を建てる場合、賃貸借契約を結び、借地権が異動しないよう「土地の
無償返還に関する届出書」を提出します。
この届出書の提出により地主である不動産オーナーの相続時の土地評価は20%の
評価減を受けることができます。
○建物の時価評価
相続発生時の寸前に個人で建物を購入(もしくは建設)した場合は、建物の
評価額は「固定資産税評価額」ですが、法人が購入(もしくは建設)した場合
は購入時の時価となってしまいます。
法人所有の建物の評価額が「固定資産税評価額」となるのは3年経過後です。
○社会保険
会社の役員・従業員は社会保険に加入する必要があります。
○会社で建物を建設する場合、相続対策にならない
不動産オーナー個人が銀行借入で資金調達し賃貸建物を建築すると、建物は
「固定資産税評価額」で評価され、債務控除となる借入金額はその借入残高の
ままのため差引差額分が節税となります。
法人で建設した場合、建物は「時価」となってしまうため、借入残高と同額
になってしまい、節税となりません。
次回は会社設立をした場合に具体的にどの程度節税になるのか、例示を用いて
解説していきます。