Columnコラム
交際費について~その2
2010 年 12 月 17 日第2回目は『使途不明金(使途秘匿金)』と『交際費』について
説明します。
グレーな話と思われるかもしれませんが、実際の税務調査では
このあたりの準備を行っているか否かで、追徴税額が倍以上
違ってきます。
万が一このような支出を行わなければならなくなった時のために
じっくり読んでみてください。
『交際費』も「相手先を公にできなくなった時点」で
『使途不明金』となります。
『使途不明金(使途秘匿金)』とは、金丸問題など建設業等の
談合に絡む『使途不明金』が急増し、社会問題になったことから、
平成6年度税制改正の際に創設されたものです。
『使途不明金』とは法人の支出のうち相当の理由がなく、
相手先の氏名・名称・住所・所在地ならびに使い道が帳簿書類
とされていない支出の事を言います。
『使途不明金』と認定されると、経費として認められなくなり、
通常の法人税に加え、その支出額の40%に相当する追徴課税が
課されるため、トータルでは80%以上の税負担となります。
企業にとってはかなりの痛手です。
2008年度では、1,264社から『使途秘匿金』が確認され、
その追徴税額は44億円になっていました。
では企業側では、『使途不明金』の処理はどのように
行っているのでしょうか。
(1)経費を自己否認する方法
これは、『決算書』上では経費としているが、『税務申告書』上
「経費としない(加算)処理」選択する方法です。
つまり企業が自ら「支出先を先を明らかにしない」という意思表示をし、
その代り、税務署に対しては「税負担を認める」というやり方です。
これを行うと、過少申告加算税や重加算税の負担を免れるメリット
があり、税務調査においても追及がない可能性が高いと思われます。
しかし、場合によっては青色申告の承認が取り消されたり、
役員賞与となる可能性(役員の源泉所得税が課される)も
あります。
(2)交際費などの勘定に紛れ込ませる方法
『交際費』以外にも、『販売促進費』、『人件費』、『支払手数料』、
『旅費交通費』などにもぐりこませている場合もあります。
税務調査において、相手先を開示しなかった場合は『使途不明金』
となりますが、「最終的に内容を明らかにすれば」その支出の
内容に照らして経費としての判断をしてもらえる可能性もあります。
(3)簿外資金による方法
●収益の簿外処理
『リベート』や『損害賠償金』などを簿外とする企業が多いかと
思われますが、調査で発見された場合は、重加算税に問われるのは
間違いない処理方法です。
●経費の簿外処理
『人件費』の架空計上や、『支払手数料』などの過大計上のように、
目立たない経費の中に含ませている企業が多いと思いますが、
こちらも上記と同様、発見された場合は重加算税は不可避です。
最終的に『使途不明金』が見つかった場合は、以下の3つの課税を
覚悟しなければなりません。
1.法人税法上
経費と認めない。
2.消費税法上
課税仕入とならない。
3.措置法62(支出課税)
支出額の40%課税
やはりかなり痛い(泣)です。
そのため、上記の課税額を見て、内容を開示する場合もあるかも
しれません。
内容を開示した場合、税務署がその支出に対し、どのような判定を
下すかですが、以下の3つとなる可能性が高いです。
●交際費、●寄付金、●役員賞与
開示したからと言って、すぐに許してくれるわけでも
なさそうです(苦笑)。
特に『役員賞与』と判定された場合、『源泉所得税』との
ダブルパンチとなり、『使途不明金』には及ばないまでも
企業側のダメージは大きくなります。
では賞与認定されないためにどのような準備が必要か
整理してみましょう。
税務署が認定賞与とする場合の根拠は、以下の3つが要素と
なります。
●簿外資産であること
●同族会社であること
●役員がワンマンであること
このような会社では、「役員が勝手に使ったのではない」と
推定できる証拠がない場合が多いのです。
上記の様な会社の場合、以下のような資料をそろえる工夫が
必要です。
●代表者が関わる取引を確実にしておく
代表者の日常取引がずさんだと『使途不明金』との違いを提示
できません。
●代表者の個人資産の増加のチェックをしておく
個人資産の増加については増加原因資料を残しておきましょう。
●社内の内部統制を整備する
複数チェックがかかるため、社内の資料が残りやすくなります。
●『使途不明金』の支出目的と事業との関連資料をできるだけ
保存すること
相手先は明確にできない場合でも支出の目的と事業との関連を
提示できれば、賞与認定されません。
●内部資料の保存
稟議書、社内承認書、役員会議事録などあくまで内部資料ですが、
税務署の賞与認定は退けられます。
●マル数字は避ける
きりのいい数字は税務調査で質問されやすいので、特に
気をつけましょう。
不況が続いているため、どうしても仕事をとりたい!
とやむを得ず『使途不明金』を使ってしまう場合もあるかと
思います。
その行為を否定はしませんが、税務上は非常に高いリスクと
言わざるを得ません。
最悪の場合どの程度のリスクが企業にもたらされるのか、リスク
評価を行うことも代表者の重要な業務の一つです。
※『使途不明金』と『使途秘匿金』は税務上は異なった
タームですが支出が見つかった場合は税務署の取り扱いは
同じなので敢えて分けずに著述しています。