LAMTIP PARTNERS Co., Ltd.

Columnコラム

所長コラム

国際税務~タイでは上場株式のキャピタルゲインに税金はかかりません

2014 年 7 月 24 日

税理士の宮原でございます。

事業承継の問題は日本だけではなくタイでも増えてきています。

10年~20年以上前にタイに進出した企業は、経営者が歳をとってしまい、
事業売却をして日本に帰りたいというニーズが出てきています。

事業承継で一番の問題は株式を「誰」に「いくら」で譲渡するかです。

長年の利益の蓄積で、売却できない未上場株式であってもかなりの高株価となって
しまい、相当の資金がないと株が買えなくなってしまっています。

また未公開株の場合は「誰」に譲渡するかで株価も変わります。

事業承継対策としては、「株価を下げてから株式を譲渡する」、「経営者の親族
が保有する株式数を減らす」のいずれかになります。

株価を下げる方法はメルマガでいくつも方法を書いてきました。

2010年10月コラム 「未上場株式 時価の引き下げについて」
〇その1 (『退職金』の支払で株価を引き下げる方法)
所長コラム2010/10/

2010年10月コラム 「未上場株式 時価の引き下げについて」
〇その2 (グループ会社の新設)
所長コラム2010/10/21

2010年11月コラム 「未上場株式 時価の引き下げについて」
〇その3 (『会社の分割』、『資産の譲渡』を用いた方法)
所長コラム2010/11/10

2012年7月コラム
〇「不動産を使った節税対策」
所長コラム2012/07/03

2012年9月コラム 「未上場株式 時価の引下げ方法について」
〇その5 (従業員持株会に自社株を持たせて、株式評価を減額させる方法)
所長コラム2012/09/19

相続税も27年1月から増税になりますので、対策は少しでも早い方が良い
と思います。

 

さて今回はタイの証券会社で口座を開設してみました。

タイでは証券税制も異なるため、日本にはないメリットもあります。

その口座開設の一部始終をお話ししていきます。

タイの株式市場はSET(STOCK EXCHANGE OF THAILAND)とMAI
(MARKET FOR ALTERNATIVE INVESTMENT)があり、SETは東証一部
MAIがマザーズといった感じです。

SETは資本金が約9億円以上の大企業が集まっており、銘柄数は500社以上
MAIは資本金6,000万円以上の中堅企業が100社以上集まっています。

タイの株式の特徴は一株当たり株価が非常に安いということです。

市場で一番高い株式でも日本円で1,000円程度、安いものでは5円を下回るもの
もあります。

投下資金が低いせいもあると思いますが、配当実績も3%程度と高配当が望める
株式が多いですね。

タイの株式は、ローカル株(L株)、NVDR株、フォーリン株(F株)の3種類
となっています。

L株はタイ国籍の投資家向け株式で、外国人がL株を所有しても議決権や配当の
権利はありません。

NVDR株はL株と同じ株価で取引ができ、外国人投資家にも配当権利が付くので、
外国人投資家に推奨されている株式ですが、議決権はありません。

F株は外国人投資家向けの株式ですが、外国人専用のフォーリンボードで
取引され、投資できる銘柄や発行株数に上限が設けられており、L株同様、
議決権や配当権利が付きますが、株価はL株とは異なります。

 

今回証券口座を開設したのは、「KT-ZMICO」社です。

前身である「シミコ・セキュリティーズ」(Seamico)とタイ大手国営銀行
「クルンタイ銀行」(KTB)が合併して、2009年に「KT-ZMICO」が誕生しました。

日本の銀行口座からでも取引ができ、オンラインで口座開設もできます。

開設に必要なものは「タイ国の銀行口座」と「パスポート」です。

サインする書式は以下のものでした。

●証券口座開設申込書

●株取引の適性テスト

●FATCA(外国口座税務コンプライアンス法)に関しての書式

●弁護士に対する依頼

1枚ぺらのものあれば10ページ近いものあるため、全て埋めるにはかなりの
時間が必要でした。

●証券口座開設申込書

日本の会社と自宅の住所・電話番号・メールアドレスを記載し、所有している
資産・負債の状況や会社での地位、報酬、どこからその報酬を得ているかも
記載していきます。

投資の源泉は給料か、会社の取引か、借入金かも聞かれます。

●株取引の適性テスト

まず個人情報として年齢、教育水準、投資の限度額を聞かれます。

次に投資情報として投資の経験年数、投資は余裕資金でおこなっているか、
投資目的の期間(長期かデイトレードか)、リスク許容度(いくらまで損を
しても大丈夫か)投資の判断基準(ローリスク・ローリターン、ハイリスク・
ハイリターンのいずれを志向しているか)をテストされます。

●FATCA

これは脱税防止のために、アメリカ国籍の人に対する取引や口座内容をタイ
当局がアメリカ当局へ開示する許可を求める書面です。

アメリカの当局の脱税に対する本気度を感じました(汗)。

日本当局からのFATCAは無い為、タイでの株取引の情報は日本の国税庁には
開示されないということなのでしょう。

●弁護士に対する依頼書

これは証券事故が起こったときはKT-ZMICOが指定する弁護士に依頼するとの
文面でした。

以上の資料を記載して提出すると2~3日で証券口座開設が完了した旨の書類
が送られてきます。

取引自体は電話・FAX・メールのいずれでも可能です。

また取引自体も日本人であれば日本語ができる担当もついてくれます。

香港での株取引よりもよほど気が楽です。

私についてくれた担当者は毎日投資レポートを送ってきてくれています。

タイでは配当には源泉税がかかりますが、上場株式のキャピタルゲインには
税金がかかりません。

ここにも富裕層優遇の一端が見え隠れしています。

2015年にAEC(アセアン経済共同体)が発足するとタイを中心とした
メコン地域の国を合わせた、GMS(グレーターメコンサプリ)証券取引所が
立ち上がるとのことです。

2020年には中間層・富裕層が4億人程度になるとも予想されています。

今後タイを中心としたアセアン地域は、日本のバブル期と同じような傾向を
示すと思われるため、株式は注目すべきでしょう。