Columnコラム
役員退職金~複数の会社から退職金をもらう場合の節税対策
2013 年 8 月 4 日税理士試験が今年も8月の上旬に行われます。
当社も受験生の景気づけに、毎年事務所で昼食会を行っています。
例年縁起を担いでトンカツだったのですが、最近「普段食べられないものが
いい!」とウナギになりました(苦笑)。
土用の丑の日は今年は7月22日だったようですが、皆さんも夏バテ防止に
ウナギを食べに行かれたでしょうか。
最近ウナギが絶滅危惧種と言われ始めて、漁獲量が減っているせいか確かに
昨年から値段が高騰しています。
ウナギ専門店ではもはや1,000円台のウナギは無くなってしまったかの様です。
日本橋は古くからの老舗が多く、「いずもや」「大江戸」「伊勢定」と名の
通った店が多くあります。
日本橋にお越しの際は寄ってみてくださいね。
では本日は「役員退職金」についての節税ポイントをお話ししていきます。
以前2011年11月上旬のメルマガでも役員退職金に関するポイントを
記載しました
所長コラム2011/11/22
が、節税対策として改めて所得税で一番優遇されている退職金について、
複数の会社からもらった場合の節税効果をまとめてみました。
まず、「役員退職金の適正額」ですが、これは税法で限度額が
決められています。
『退職金』
役員退職金額=勤続年数×退職する月の最後の給与額×功績倍率(約3倍)
そしてこの退職金から控除額を差し引きます。
『退職控除額』
勤続年数20年までは40万円/年、それを超えると70万円/年になります。
『退職所得』
退職所得は、(退職金-退職所得控除額)を2分の1にしたものとなります。
加えてこの退職所得はその年度の他の所得と合算されない(分離課税)ので、
退職の年の役員報酬と合算されません。
つまり低い累進税率を使えるという事です。
具体的に、
創立「23年」で「1社」から「1億円」退職金をもらった場合と、
創立「23年」で「5社(A社、B社、C社、D社、E社)」から
「2,000万円ずつ」退職金をもらった場合
の手取り額はどれくらい違うでしょうか。
〇「1社から退職金を1億円もらう場合」
『退職金』
23年×150万円×3倍≒1億円
『退職所得控除』
800万円+70万円×(23年-20年)=1,010万円
『退職所得』
(1億円-1,010万円)×1/2=4,495万円
『退職所得にかかる所得税』
累進税額をかけると
4,495万円×40%-280万円=1,518万円
『退職所得にかかる住民税』
住民税は退職所得の10%のため、
4,495万円×10%=449万円
『手取額』
1億円-(1,518万円+449万円)=約8,000万円
となります。
次に
〇「5社から退職金を2,000万円ずつもらう場合」ですが、
19年目から1社ごと2,000万円ずつ退職金をもらう前提とします。
●19年目で退職するA会社
『退職金』
19年×36万円×3倍≒2,000万円
『退職所得控除』
40万円×19年=760万円
『退職所得』
(2,000万円-760万円)×1/2=620万円
『退職所得にかかる所得税』
累進税額をかけると
620万円×20%-42万円≒82万円
『退職所得にかかる住民税』
住民税は退職所得の10%のため、
620万円×10%=62万円
『手取額』
2,000万円-(82万円+62万円)=約1,856万円
●20年目で退職するB会社
『退職金』
20年×34万円×3倍≒2,000万円
『退職所得控除』
40万円×20年=800万円
『退職所得』
(2,000万円-800万円)×1/2=600万円
『退職所得にかかる所得税』
累進税額をかけると
600万円×20%-42万円≒78万円
『退職所得にかかる住民税』
住民税は退職所得の10%のため、
600万円×10%=60万円
『手取額』
2,000万円-(78万円+60万円)=約1,862万円
●21年目で退職するC会社
『退職金』
21年×32万円×3倍≒2,000万円
『退職所得控除』
800万円+70万円×(21年-20年)=870万円
『退職所得』
(2,000万円-870万円)×1/2=565万円
『退職所得にかかる所得税』
累進税額をかけると
565万円×20%-42万円≒71万円
『退職所得にかかる住民税』
住民税は退職所得の10%のため、
565万円×10%=56万円
『手取額』
2,000万円-(71万円+56万円)=約1,873万円
これをD社、E社と5年間繰り返していくと、
23年まで5社から受け取る退職金は合計1億円ですが、納税額633万円
手取額9,367万円となります。
〇つまり、1億円を1社からもらった時と比較すると
手取り額で9,367万円と8,000万円で1,367万円もの差が出ることになります!
退職金の税制は今の日本では最も優遇されていますが、この方法を積極的に
活用すると、より効果的な節税対策が取れるのです。
会社も1社だけではなく、地域や部署で分社したり、労働訴訟等の責任範囲の
限定等行うため、複数社を経営していく事がリスクヘッジとして重要な場合が
あります。
今からでも遅くは無ないので、ぜひ検討してみてください。