Columnコラム
持株会社とは・・?~グループ会社を作る上での税制の注意点
2012 年 11 月 7 日10月23日の『「きんざい」金融財政事情研究会』社のセミナーの中で
質問が来ました。
「存続可能な事業(産業)と今後成長が見込めない事業(産業)の見極めを
金融機関としての判断基準例をご教授願いたい」
私たち会計業界は、様々なクライアントを通して企業(事業)の
成長や衰退を肌で感じています。
従来日本を牽引してきた業種はマーケットの縮小(人口動態の逓減)に
より、成長が見込めない産業となってきています。
家電業界の凋落は激しいものがありますし、半導体、車と日本の基幹産業の
中で短期的に成長が見込めるものは今のところ見当たりません。
しかしその業界の中で、個別の企業には勝ち組・負け組が出てきています。
勝ち組として成長を続けられている企業の要素は、
〇国内のマーケットから海外のグローバルマーケットに打って出ている
〇国内の縮小していくマーケットの中で、ライバルを圧倒する差別化を達成
している
この二つの要素のいずれかを満たしている企業が、成長を続けています。
全ての産業の成長が止まる中、個別の勝ち組企業をどう見極めるか・・
金融機関の方の慧眼が試されています。
さて、
国内のマーケットが狭まってきている関係で、経営統合若しくは合併
したいというお話が増えてきています。
今日は、同業者と企業グループを作る上でどの様に経営統合をおこなえば
良いかお話ししていきます。
グループ化を行う上で、経営統合を大きく分けると『持株会社制』と
『合併』の二つに分けられます。
『持株会社制』は、今までは上場企業が主に行ってきましたが、今後は
中小企業でも増加する形態だと思われます。
◎持株会社制
持株会社を設立し、各社が子会社として傘下に入る方法
〇メリット
各社が存続するため、従業員の抵抗感、実務上の統合作業も少ない
〇デメリット
●各社がそのまま存続するため、相乗効果が発揮されにくい
●一定期間後に各社を統合する必要がある。
〇税制上の特徴
100%子会社となっている場合は『グループ法人税制』の強制適用を
受けます。
『グループ法人税制』とは22年税制改正により、施行された
完全支配企業グループ間の取引に関するもので、税制上特殊な取引が
いくつか散見されます。
〇『グループ法人税制』
●グループ法人間の資産の譲渡取引
以下の資産の譲渡取引においては、損益が発生しません(繰延)。
□固定資産
□土地
□有価証券(売買目的除く)
□金銭債権
□繰延資産
しかし、売買有価証券、譲渡価額1,000万円未満の資産、棚卸資産の
取引は損益の繰延を行いません。
●グループ法人間の寄付
□親会社におカネを渡した子会社 ⇒ 子会社の経費となりません。
□子会社からお金を受け取った親会社 ⇒ 親会社の収入となりません。
●グループ法人間の受取配当等
子会社から配当を受け取っても収入となりません。
上記の取引の立法意図を考えてみると、企業グループ間を一つの企業と
みなして、資金(資産)融通を行えるようにしていると思われます。
他にもありますが、グループ間取引で良く見受けられるものを
挙げてみました。(※詳細はご質問ください)
このように100%子会社を設立する場合は十分に気を付けてください。
また、完全支配グループ企業間には、『連結納税』の適用(任意適用)も
あります。
〇『連結納税』
●メリット
連結納税の対象となる企業グループ内での「損益通算」が可能
(「損益通算」とは、黒字と赤字の企業を合算して利益を計算すること)
●デメリット
□連結グループ加入時の子会社「欠損金」の切り捨て
□連結グループ加入時の子会社「時価評価」
●加入時期
適用申請を行う事業年度の開始の日の3ケ月前
上記の税制のままでは「社歴が長く、含み益を持っている法人」や、
「赤字会社」は、連結納税グループに入ることをためらうでしょう。
以上100%子会社を傘下とする持株会社制(ホールディングス)は、
参加企業によるメリットとデメリットを十分に考慮した上で行う
必要があります。
次にスタンダードな合併ですが、
◎合併
合併の中にも、新しい会社を作って合併する「新設合併」と、
小さい会社を取り込んでしまう「吸収合併」があります。
●新設合併
いずれの会社も無くなるので、従業員に抵抗感がありません。
●吸収合併
存続会社と消滅会社との間に「支配する者」「支配される者」の
心情が生まれる可能性があります。
〇メリット
一気に統合するためシナジー効果が出ます。
〇デメリット
統合作業の大変なため、現場が疲弊してしまう事もあります。
〇税制上の特徴
合併に至るまでに両社の含み損益や欠損金をすべて引き継げる
「適格合併」 と、すべての資産を時価で引継ぎ、損益全てを
開示しなければならない「非適格合併」があります。
『持株会社制』、『合併』のいずれの方法を採る場合も、欠点・長所が
あります。
ただ、マーケットの縮小と事業承継を行う会社が多くなるこれからは
避けて通れない問題となるのは間違いないでしょう。
今日のお話は、個別の税制がかなり難しい内容となります。
解りやすくするため、簡単にお話ししていますので、実際に
持株会社等を設立するときは必ずご相談ください。