LAMTIP PARTNERS Co., Ltd.

Columnコラム

所長コラム

未上場株式 時価の引下げ方法について~その1

2010 年 10 月 7 日

前回はシンガポールからの配信でしたが、毎年10%弱の成長を
続けている国の凄さを肌で感じてきました。

シンガポールについて少しわかったことをご報告します。

 

まず、私の専門の税制ですが、法人税は一律17%でした。

ただ、事業税が控除されるため、実質は10%弱と思われます。

交際費は潜在的な顧客への接待も含め全額控除されるようです。

また配当やキャピタルゲインは原則非課税となるため、実質的な
日本の税法と比較すると、かなりの軽減となりそうです。

消費税は、『GST』と呼ばれ、7%の税率がかかっていました。

市内の様子ですが、今回の視察では、ちょうどF1のシンガポール
グランプリが行われており、市内はものすごい熱気でした。

モナコの様に公道でのグランプリ開催となっただけに、サーキットとなる
公道の照明だけで八億円かけたようです。

開催の間中24時間市内は明るく照らされていました。

チャンギ国際空港はハブ化されており、24時間の運行と
成田空港の4倍はあろうかという規模の空港になっています。

特に免税店の規模と充実ぶりには目を見張るものがありました。

さらに港湾にはコンテナをつけるドックの建設が進み、
クレーンが林の様に海に向かって立ち並んでいます。

日雇い労働のため、トラックで港湾労働者を運びますが、その日の仕事に
ありつくため、トラックの荷台に皆がよじ登り、振り落とされんばかりの様相で
走っていきます。

道行く人も元気で、体格が良く、日本人の元気のなさが一層
思い浮かんでしまう旅行となってしまいました。

これからどうやってあの国の様な熱気を日本が取り戻すか・・
今更ながら考えてしまいました。

 

さて、

今回の回答に入りますが、『未上場株の株価』を低くすることが
できるのでしょうか?

という質問です。

これは、会社の財務内容や条件など複合的な要素を含んでおり
かなり難しい質問です。

昨今、事業承継に伴い、相続や株の譲渡が発生してきています。

ところが未上場株は通常譲渡制限をかけていることもあり、譲渡自体が
難しく、加えて株価も算定が困難です。

そのため今回は私どもの事務所で使用している一般的な方法のみを
数回にわたってお伝えします。

 

1回目は、『退職金』の支払で株価を引き下げる方法です。

この方法は役員が退職し、会社が相応の退職金を支払う時の条件も
考えなければなりません。

一時的に会社は単年度赤字になりますし、今まで蓄積した利益も
減額され、結果として株価は減額されます。

たとえば前提として、月額100万円、勤続年数30年、代表取締役が
創業者(功績倍率3倍)の場合の退職金を支払います。

『退職金』は、法人の経費となり、『退職金』の税務上の
算定式は以下の通りです。

最終役員報酬月額×勤続年数×功績倍率=退職金

100万円×30年×3=9,000万円

 

代表者は、

1.給与は代表取締役の時代の半額

2.持株も可能な限り他に譲渡する

3.経営上の意思決定は行わない

上記3つの条件をクリアできる場合は、会社に残ることも可能です。

 

この時、『退職金』を受け取った代表者の税金が通常の役員報酬と比較して、
どの程度節税効果があるかというと、

●役員報酬として9,000万円をもらった場合の納税額は、

(9,000万円-620万円※1)×40%-279万円=3,073万円・・(a)

※1.「給与所得控除」

9,000万円×5%+170万円=620万円

 

●『退職金』として9,000万円もらった場合の納税額は、

(9,000万円-1,500万円※2)×1/2=3,750万円

※2.「退職所得控除」

40万円×20年=800万円・・

70万円×(30年-20年)=700万円・・

+=1,500万円

3,750万円×40%-279万円=1,221万円 ※3・・(b)

※3.他の所得と合算されることはありません。

 

以上から税金の差額は

(a)役員報酬;3,073万円>(b)退職金;1,221万円
となり、およそ2,000円弱の納税額の差が出てきます。
(※住民税は考慮していません)

 

以上法人が退職金を支払った場合の自社株式の引き下げ効果と
個人への影響をご説明しました。

次回は株価を引き下げる他の方法をご紹介します。

 

『ここで一言』!

退職金をもらうことは、個人の所得税の節税においては、
日本の税制の中で最も効果の高い方法です。

自社株式の株価を引き下げると共に、個人で効率的に
資金を貯めていく為には、退職金の支給は非常に有効です。

退職金を使った個人の節税方法はまたの機会にご説明します。