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所長コラム

未上場株式 時価の引下げ方法について~その3

2010 年 11 月 10 日

今年も8月以降クライアントへの税務調査がいくつか入って来ています。

調査準備を行ってみると、今回の弊所のクライアントの調査は、
ほとんどが海外との取引のある企業でした。

そこで調査立ち会いで調査官と話してみると、「今年下半期の調査に
関しては、海外に支店や工場があり、海外との取引を行っている
企業に絞って調査を行っている」とのことです!

最近は東南アジアに支店や工場を持っている会社が中小企業でも
当たり前になってきました。

そのため、かつては大企業しか適用されなかった『移転価額税制』
といった税制も活用され始めました。

つまりは海外に「利益」や「資金」を違法に積み上げていないか、という事です。

海外との取引が過去、現在まで行われている方は今後調査が入る
可能性が高いと思って間違いないと思います。

今月11月までは税務署の調査が入りやすい月なので、取引内容
(契約書など)には十分注意を払っておいてください。

 

さて

前回から引き続き、『未上場株の株価』を低くすることができるのでしょうか?

という質問の3回目の回答です。

今回は『会社の分割』、『資産の譲渡』を用いた方法を説明します。

これは、現在あるAという会社の「資産」もしくは「事業」を
Bという会社に分けて、会社の「純資産」を少なくする方法です。

中小企業(オーナー企業)では、関係会社又は子会社を持って
いる会社は多数あります。

その場合、自身の会社が「含み損」を抱えている場合、関係会社に資産
(もしくは事業)を譲渡(もしくは分割)することで、損失を実現し、
株価の引下げを行います。

具体的な事例を挙げて説明します。

 

『前提条件』

A社と関係会社のB社を所有しているオーナー企業があるとします。

A社の貸借対照表では、

●資産が4,000円;内、不動産1,000円(△(含み損)500円)
●負債が3,000円、資本が1,000円

となっているとします。

つまりは資産の中に不動産1,000円あるのですが、500円の含み損を
抱えている状況です。

いずれも、「銀行」や「リース会社」との交渉は必要になりますが、
A社はB社と以下の取引を行うことで、株価を引き下げること
ができます。

 

1.資産の譲渡の場合

A社の資産(不動産1,000円)をB社に譲渡することで、
譲渡損失分の500円の含み損が実現できます。

現金預金500円 /不動産1,000円
譲渡損失500円

 

2.分社の場合

A社の事業をB社に譲渡(負債は省略)することで、事業
移転に関わる損失分500円の含み損が実現できます。

他社株式500円 /事業資産(不動産)1,000円
移転損失500円

 

ここで注意点があります!

今年(平成22年)10月1日から『グループ法人税制』が施行になりました。

今までは、上記で説明した方法で完結でしたが、先月からは、
『グループ法人税制』上の「完全支配の状態」を解消したうえで、
上記の取引を行わないと「含み損」が実現されません。

では『グループ法人税制』上の「完全支配の状態」とはどういう
状態を指すのでしょうか?

『グループ法人税制』の創設の意図は「会社が単体での活動より、
グループの活動が優先されている時代となってきたので、
グループ間の取引については、一体の会社とみなして課税する」
との内容です。

確かにメリットもありますが、グループ間での恣意的な利益操作
かつ租税回避を防ぐことに重点が置かれているようです。

 

『グループ法人税制』については以前「宮原税務会計事務所」での
コラムでご説明していますが、
所長コラム2010/05/21

『グループ法人税制』での「完全支配の状態」とは、個人や
外国法人も含めて、100%支配関係にあるグループの事を指します。

今までは直接的な資本関係がなければ別グループでしたが、親族
(個人)が所有している会社は、グループ内に含まれる可能性があります。

 

以下例示として、A会社とB会社の↑↓取引はグループ間取引と
みなされます。 (かっこ)は株式の所有比率

 

『グループ間取引の例示』

●兄弟でそれぞれ会社を持っている場合

  兄(100%)⇒ A会社
          ↓↑
  弟(100%)⇒ B会社

●個人Aが100%所有している外国法人が
国内の会社を所有している場合

  個  人A(100%)⇒ A会社
              ↑↓
  外国法人※(100%)⇒ B会社
  ※個人Aが100%支配

●個人Aが別会社に出資している場合

  個人A(100%)⇒ A会社
            ↑↓
  個人A(100%)⇒ B会社

『グループ法人税制』は中小企業の関係会社間取引に多大な影響を
及ぼす可能性があります。

今まで問題ないと思っていた取引でも「親族」が持っている会社と
取引を行う場合、一度ご連絡ください。