Columnコラム
未上場株式 時価の引下げ方法について~その5
2012 年 9 月 19 日8月の初旬から毎週税務調査が続いています。
そのため、通常の業務がほとんど進まず、平日の夜か、土日に溜まった
仕事を片付けている状態です。
最近当社で調査があった会社を分析してみたところ、売上が上がるか、
利益が出ている企業がほとんどです。
先日来た税務署員にどんな会社を調査対象にしているか聞いてみたところ、
「先生のところの会社は優秀なんじゃないの?」と言われてしまいました。
私が税務調査において気を付けていることは、「お土産を持たせない」事
です。
「税務署が来たら、お土産を持たせなきゃ帰ってくれないよ」という先生も
いますが、実態は逆です。
一度お土産を持たせると、税務署員は次もお土産がもらえると思って、
又すぐ調査に来てしまいます。
「理屈に合わない課税は拒否」しなければなりません。
そのため、税務署と喧嘩になってもやむを得ないと思っています。
よく、「宮原先生が怒るなんて信じられない」と言われます(笑)が、
もちろん、あくまで税務署が無理を通してくる場合です・・・
さて、今日のお話ですが、
「未上場企業の株価の引き下げ方法」について、前回のメルマガまでで
4つほどの方法をお話ししてきました。
2010年10月コラム
「未上場株式 時価の引き下げについて」
〇その1
所長コラム2010/10/07
「未上場株式 時価の引き下げについて」
〇その2
所長コラム2010/10/21
2010年11月コラム
「未上場株式 時価の引き下げについて」
〇その3
所長コラム2010/11/10
2012年7月コラム
〇「不動産を使った節税対策」
所長コラム2012/07/03
今日は5つ目のスキームについてお話ししていきます。
今回の方法は、「従業員持株会に自社株を持たせて、株式評価を
減額させる」方法です。
未上場の株式の評価(税法上)は、3つあり、原則評価の高い順から、
〇純資産価額法
〇類似業種比準法
〇配当還元法
となります。
「会社のオーナーが所有している株式」は、「純資産価額法」で
評価します。
これに対して同じ株式を「従業員が所有」した場合は、「配当還元法」で
評価します。
つまり、税法上「未上場株式を評価する場合」は、同じ株式でも「誰が
所有しているか」によって価値が変わってきてしまうのです。
この評価方法を利用していきます。
まず、オーナーは自分が持っている株式を従業員(従業員持株会)に
譲渡します。
すると、低い評価の「配当還元法」で評価する株式数が増加し、相対的に
高い評価の「純資産価額法」で評価する株式数は減少します。
つまり、会社全体の株式評価を行った場合は、株価が減額されて
いるのです。
以下、従業員持株会に株式を持たせた時のメリットとデメリットです。
〇メリット
●従業員の財産形成等の一助となり、福利厚生対策となる
●株式を公開する場合は、安定株主として期待できる
●株主構成の改善(多数の株主がいる場合と比較すると株式事務の
合理化に有効)
●配当が出るため、従業員のモチベーションが高まる
●オーナーの事業承継・相続税対策にも効果的
〇デメリット
●株主関係が悪化すると会社運営が混乱する可能性がある。
●公開へ向けた資本対策の制約条件となる可能性がある。
●従業員が株式を売却したい時でも、市場での取引がないため即換金
できない。
●従業員持株会からオーナーが買い戻す場合は、原則純資産価額法で
買い戻さなければ贈与税の問題が生じる。
ただ、オーナーとしては、「株価が下がるのは良いが、自分の持分が
減ってしまっては、経営権が無くなってしまう」と思われるでしょう。
そのため、従業員持株会の設立に関しては、以下のポイントに注意して
ください。
〇オーナー所有株式のうち、経営権に影響のない株式について配当優先株
とし、無議決権株式化する。この株式を譲渡する。
(無議決権株式は発行済株式数の2分の1を超えて発行することは
できない)。
〇会社の定款に株式の譲渡制限規定がない場合には、
譲渡制限規定を設けておく。
(自社株が勝手に従業員から第三者に譲渡されるのを防ぐ。)
〇従業員持株会の規約を整備する。
(特に従業員が退職する場合に、従業員持株会またはその指定する者
へ持株を譲渡する旨の規定と買取価格の算定方法を明記)
従業員持株会が適切に機能する場合は、経営陣・従業員いずれにとっても
WIN-WINになるため、是非とも行ってみたい方法ではあります。
不明点がある場合はご連絡ください。