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法人税~海外に進出する時の注意点;タックスヘイブン税制

2013 年 7 月 8 日

先日クライアントの製造業の社長にお話を伺ってみましたが、「円安に
なっても日本に製造拠点を戻すつもりはない」という方が、かなりの数を
占めていて驚きました。

安倍内閣が設備投資減税を行うとのことですが、「リーマンショック前に
設備投資は行ってしまっており、今の段階では過剰投資」いうことです。

新聞紙上では中小企業の景気も緩やかに回復すると言われていますが、
実際にこのような声が聞こえてくると、「日本の内需は円安でも復活しない
可能性」がありますよね。

人口動態から見ても、日本の需要は間違いなく減少していきます。

日本の人口は今から減少を続け、50年後には9,000万人を割り込んで、
4人に1人が75歳以上の超高齢化社会になるそうです(恐)。

それと比較して東南アジアの人口増と、それに伴う内需の拡大は目を
見張るものがあります。

これを取り込もうと、最近中小企業でも海外に会社を普通に設立し始めました。

 

ただ、海外に進出するときは税制も特殊です。

海外に子会社を設立して、日本の親会社と取引を始める場合、いくつか
気を付けなければならない税制がありますが、今日はその中で
『タックスヘイブン税制』についてお話ししていきます。

『タックスヘイブン税制』の名前は聞いたことはあるが、実際にどのような
税制で、自分の海外子会社にどう影響してくるかわからない、という経営者が
ほとんどだと思います。

 

まず『タックスヘイブン税制』の定義ですが、

「税率が低い国(軽課税国)に海外子会社を設立し、その子会社を利用して
租税回避行為を行うことを防止するために創設された税制」です。

課税の仕方は、「軽課税国の海外子会社の所得を、日本の親会社の所得と
合算して日本で課税」していきます。

つまり、日本で連結決算をしている子会社があるのと全く変わらないという
事です。

軽課税国とは、「法人税の税率が20%以下」の国の事を言います。

今法人税が20%を超えている国に海外子会社があっても油断はできません。

現在東南アジアの各国は投資を呼び込むため、法人税の引下げ競争を
行っています。

2013年の段階で

●タイ20%
●カンボジア20%
●シンガポール17%
●香港16.5%

となっており、今後他の国も法人税率を20%以下に下げてくる可能性が
あります。

つまり、今の段階で25%でも来年20%になってしまうと、タックスヘイブンに
海外子会社を構えていることになってしまうのです。

 

では海外子会社とはどの様な会社かというと、

「軽課税国に、日本の資本(法人+個人)が半分以上を占める会社の株式を
10%以上持っている会社」です。

通常と異なり株式の10%を所有しているだけで子会社となってしまうのです。

この判定を行うに当たっては、自社と関係のない日本法人が株主である
場合も含まれてしまうので、軽課税国に資本を出す場合は、その会社の株主
構成を必ずチェックする必要があるということになります。

今年からタイが20%以下に法人税を引き下げました。

タイの会社に資本を出している場合は、今年の申告では必ず株主構成を確認
するようにしてください!

ただ、タックスヘイブンに子会社があっても、実体のある事業を行っている
場合は、子会社の所得が日本の親会社の所得と合算されることはありません。

 

では、どのように事業を行っていれば「タックスヘイブン税制」の課税を
免れる事が出来るのでしょうか。

「タックスヘイブン税制」の免除には、全部で5つの基準があり、その中で
まず「事業基準」、「実体基準」、「管理支配基準」をクリアしなければ
なりません。

それに加えて、会社の業種に応じて「非関連者基準」又は「所在地国基準」の
いずれかをクリアすれば、タックスヘイブン税制は適用されません。

 

〇事業基準

軽課税国で行っている「事業」により判断される基準です。

「株式・債権の保有」、「特許権等の提供」、「船舶・航空機のリース」に
拠って収益を上げている事業であってはなりません。

わざわざ軽課税国で上記の事業を行う必要があるかといった趣旨の基準であり、
サービス業等一般の事業であれば問題ありません。

 

〇実体基準

子会社がペーパーカンパニーでなく、実体があることを判定する趣旨の
基準です。

事務所・店舗・工場その他施設を有していることが必要ですが、事務所を
借りていても実体基準はクリアします。

平成23年5月29日の東京高裁判決では、レンタルオフィス内で机一つ分を
賃貸した上で事業を行っている会社に対して、実体基準があると認められ
ました。

 

〇管理支配基準

●株主総会・取締役会の開催を現地で行っている

●役員としての執務執行を現地で行っている

●会計帳簿の作成、保管が現地で行われている

●キャッシュの管理を現地で行っている

●子会社の代表者は日本の会社の役員と兼務しない

等を行っていれば、課税をクリアできるという基準です。

「実体基準」と同じく平成23年5月29日の東京高裁での判決から、
「現地の役員が他の多数の会社の役員を務めている場合でも、
現地に居住して執務を行っている場合は、子会社の指揮監督を行っている」
と認めているので、現地在住であれば、日本法人の役員兼務でも管理支配を
行っていると認められるようです。

いずれにしても、実態ありきだとは思いますが・・

 

〇非関連者基準

例えば、「卸売事業」では、仕入高・売上高の半分以上が「自社の関係会社」
との取引である場合は、取引金額を操作できるため、第3者との取引と
みなされず、『タックスヘイブン税制』の対象となります。

 

〇所在地国基準

「製造業」や「不動産業」、「リース業」等を営む子会社がその国で事業を
行う事に経済合理性があるか否かを判定します。

つまり、香港で製造分門を担っている海外子会社が、香港において相応の
製造費用を支出していない場合は、香港で製造を行っている合理性が無いと
判断されます。

以上の基準をクリアすることでペーパーカンパニーではなく、実体のある会社
だと判断されるのです。

ただ、上記の基準をクリアしている場合でも、タックスヘイブン所在の
海外子会社は、「事業で得た所得」は親会社の所得と合算されなくても、
「配当や利子等の事業と関係ない所得」(資産性所得)は1,000万円を
超えた段階で合算されてしまいます。

 

海外に会社を設立したり、資本参加をするときは十分気を付けていって
下さいね。

『タックスヘイブン税制』について不明点があるときはいつでもご連絡
下さい。