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海外不動産を使った節税方法~法人・個人共に大きな対策となります!

2013 年 10 月 18 日

10月はバンコクでタイの会社の調査を行ってきました。

バンコク入りした当日に、東京の会社から現地の会社の調査依頼が
入ったのですが、資料が全てタイ語・英語の他、タイ人との
コミュニケーションは通訳を伴ってのため、調査は日本の様に
スピーディにはいきません。

先方もこちらから指示した資料を社内で集めきれていない状況だったので、
まずはインタビューから調査依頼の要点を絞って行く手法に切り替えました。

先方との話の中では、タイでも日本の会社を買いたいと言っているところが
あるとの話も出てきます。

一昔前は、中堅企業では海外企業の買収はほとんど見かけられませんでしたが、
今では当たり前の様に行う時代になってきました。

私たち専門家も日本以外の税法も当たり前の様に知っていなければいけない
次代になってきてしまいました(恐)。

 

そこで、

今日は、先日の『日経新聞』平成25年9月18日のマネー&インベストメントに
記事が掲載され、また10月8日号の『エコノミスト』でも取り上げられていた
海外不動産についてお話ししたいと思います。

アベノミクスで日本でも不動産が良く売れています。

インフレヘッジと相続対策と思われますが、最近良い物件が市場に出回らなく
なってきた様です。

私にも不動産会社から「相続で良い物件が出てくることがあったら知らせて
ください」という話も来るくらいです(苦笑)。

 

では日本で良い物件が出ないのなら、海外に目を向けてみましょう。

海外の不動産を個人または法人で購入した場合、税金はどうなるのでしょうか。

 

前提条件ですが、

●取得価額:1億円の木造建物
日本だと建物は30年以上たてば価値がほぼ無くなりますが、海外の物件では
資産価値が安定しているものも少なくなく、1億円程度する物件もままあります。

●法定耐用年数:22年
木造なので、耐用年数は22年となります。

●所在地:アメリカ

●減価償却額:2,500万円/年
既に30年経過しているとこの建物の耐用年数は、中古資産の耐用年数を用いて、
22年×20%=4年となります。(端数切捨て)

この場合「減価償却」は耐用年数4年の定額法となり
1億円×0.25=2,500万円
が1年間の償却費用となります。

●売却価額:1億円
きちんと管理していたので、売却の時も1億円で売れました(笑)。
5年以内の短期譲渡と、5年を超えた長期譲渡の2パターンを考えてみます。

●不動産売却時の所得にかかる税率

□5年以内(短期譲渡)
39%(国税30%・地方税9%)

□5年超(長期譲渡)
20%(国税15%・地方税5%)

●法人税
40%

この建物を『個人』で取得した場合と『法人』で取得した場合の
シミュレーションを行ってみます。

個人で海外不動産を購入する場合、その購入者が日本の税制が適用される
「居住者」であれば、海外の不動産を買って海外で人に貸した場合も、
日本で不動産を購入して不動産所得(若しくは事業所得)を得ているのと
同じ取扱いになります。

 

『個人の場合』

個人の場合は、収入の種類によって経費の計上の仕方が異なってきます。
まず大きく分けると、個人の所得は「総合課税」と「分離課税」に分かれます。

「総合課税」は●給与所得●不動産所得●事業所得●雑所得など全部で10項目の
所得を合算して所得(儲け)を出します。

これに対して「分離課税」は、

●土地の譲渡●有価証券の譲渡、それぞれの収益と損失を合算して所得(儲け)を
算出し、課税額を導き出します。

つまり、個人で不動産事業を行っている場合、不動産賃貸の所得(儲け)は
「総合所得」であり、不動産そのものを売却した場合は「分離課税」となり、
両方を合算することはできないのです。

まず、サラリーマンをしている個人が、アメリカの不動産を取得して
不動産賃貸業を始めた場合、初年度賃借人が入らなければ、

●給与所得  3,000万円

●不動産所得   0万円

不動産賃貸業を行っているため、減価償却額2,500万円は丸々不動産の経費と
なります。

このサラリーマンの1年間の所得は、

3,000万円(給与所得)+(0円-2,500万円:不動産所得)=500万円
となり、

給与所得のみで3,000万円(税率40%)の時は1,200万円の税金でしたが、
不動産所得(△2,500万円)と合算したことにより、所得は500万円(税率20%)
となり、100万円の税金となります。

給与所得で納めていた源泉税が1,100万円戻って来る計算になります。

また、5年後にこの不動産を売却した場合ですが、4年で償却は終わっているので
1億円の収入に対する税額は

(1億円(売却価額)-0円(取得価額))×39%=3,900万円

5年を超えて売却すると

(1億円(売却価額)-0円(取得価額))×20%=2,000万円

1億円で売れる場合、利益の繰り延べとも考えられますが、いずれにしても、
給与所得の3,000万円とは合算されないので、相当の節税となります。

 

『法人の場合』

次に法人でアメリカの物件を購入した場合ですが、これは不動産の賃貸収入、
不動産の売却損益いずれも法人事業の損益と合算できます。

減価償却費1億円(2,500万円×4年)は法人の経費となりますが、売却時の
1億円は収入になってしまいます。

個人と同じく建物1億円の償却を終わらせた後に売却するので、利益の繰り延べと
なっていますが、長期譲渡の場合でも税率は40%なので、個人と比較すると、
節税額は低くなります。

 

日本では今後不動産の価値そのものが右肩上がりに上がることは難しいと
思いますが、海外ではまだ可能性があります。

「日本以外の選択肢」を持ってみることも意外とリスクヘッジとなるかも
しれませんね。