Columnコラム
海外赴任する方の社会保険(健康保険と厚生年金)について
2011 年 8 月 19 日私達のサービスは、経営に関わる問題について、経営者の方の立場に
立って、幅広くお手伝いしていくことが評価されています。
そのため、現在弁護士や社会保険労務士など8業種にわたる専門家と
提携を組んで経営者の方のサポートに当たっています。
その中で、最近特に増加してきているのが、国際問題です。
もう一握りの大企業のだけが海外進出していれば良いといった
時代ではありません。
パイが縮小してきている日本で争うより、日本と同じサービスを
海外という違う場所に持っていくことで、差別化を図ることができる、
と考える経営者の方が増えてきています。
これは、ラーメンや洋服など非常に身近な分野にも及んでいます。
今回は、海外進出にからんで社会保険(健康保険・年金)の適用が
どのようになるのか、お話していきます。
前提としては、日本の企業に勤務している人が海外赴任した場合、
日本で加入している健康保険と年金が、海外にいる間はどのように
なるか・・です。
まず、該当者が日本に「居住」しているか、していないか(すでに
日本の住民票が無い場合は「非居住」となります。)で大きく分かれます。
そのため、まず日本に「居住」している場合ですが、
〇居住の場合
税務の要件とは異なり、日本に「住民票」があれば居住と
みなされます。
※「税務」の居住の要件は、住民票だけでは無く、もっと
厳しくなります。(詳しくは別の機会に記載します)
●年金
会社に勤めている人はほぼ厚生年金に加入していると思いますが、
国民年金に加入している人もいるかと思います。
1.厚生年金
□自分が勤めている会社が、社会保険の「適用事業所」であれば、
自身の海外赴任と関係なく、被保険者に該当します。
そのため、海外に赴任しても厚生年金には加入できます。
2.国民年金
□住民票があれば、国民年金には必ず入らなければなりません。
海外にいるかどうかとは別問題です。
●健康保険
1.政府管掌健康保険(健康保険組合)
□厚生年金でお話したように、自分が勤めている会社が、
社会保険の「適用事業所」であれば、自身の海外赴任と関係なく、
健康保険に加入できます。
□海外で病気になった場合は、かかった医療費は健康保険組合に
請求すると健康組合負担分が戻ってきます(7割程度でしょうか)
ただし、海外では一旦全額負担することになります。
□日本の健康組合に還付の請求手続きを行うには「診療報酬明細書」
と、病院の「領収書」が必要です。
必ず保管しておいてくださいね。
2.国民健康保険
□住民票がある場合は加入できます。
※日本での所得が少ない場合は、保険料も少額になります。
ここから日本に住民票が無い場合です。
〇非居住の場合
日本に住民票が無い場合は「非居住」者となります。
●年金
1.厚生年金
□「居住」している場合と同様、自分が勤めている会社が、
社会保険の「適用事業所」であれば、自身が海外駐在のため
「非居住」者となっていたとしても、厚生年金に加入できます。
税務と関連性があるためだと思いますが、この質問が非常に
多いです。
2.国民年金
□国民年金は非居住者も任意で加入することができます。
※25年の加入期間が無いと、年金はもらえません。
しかし、任意で加入しない場合でも、海外在住期間は25年の
合算対象(海外+国内)となります。
ただ、年金はもらえますが、受領額には反映しないので、手取りは
少なくなってしまいますが。
□海外在住期間を証明するためには、日本領事館が発行する
「在留証明書」と日本の「戸籍の附票」に記載される転出届で
証明する事になります。
●健康保険
1.政府管掌健康保険(健康保険組合)
□これも、上記同様会社との雇用関係で、健康保険に加入できます。
※自身が「非居住」者であることとは関係ありません。
繰り返しになってしまいますが、重要なため上記の内容を再度
確認します。
□海外で病気になった場合は、かかった医療費は健康保険組合に
請求すると健康組合負担分が戻ってきます(7割程度)
ただし、海外では一旦全額負担することになります。
□日本の健康組合に還付の請求手続きを行うには「診療報酬明細書」
と、病院の「領収書」が必要です。
しっかり確認していただけたでしょうか・・
2.国民健康保険
□「非居住」者は加入できません。
ただ、一時帰国でも住民票を取得すれば加入は可能です。
ちょっと話が変わりますが・・
租税条約と同様に、日本は社会保障の協定を各国と結んでいます。
その場合の協定の内容を以下で記載します。
もしご自分が該当の国に行っている場合は確認してみてください。
〇社会保障協定の締結
●原則
原則は、就労国の年金制度に加入することになるので、
日本に住民票が ある場合などは2重に支払うことになって
しまいますよね。
そのため、各国は海外赴任者の2重の負担を防ぐため社会保障協定を
締結してきています。
●社会保障協定締結
1.海外の赴任が五年以内の一時就労
日本の年金のみ加入することで、以下の就労国の社会保険料は
免除されます。
※アメリカ、韓国、英国、ドイツ、ベルギー、フランス、カナダ
オーストラリア、オランダ、チェコ
2.2国間の保険期間の通算
以下の就労国と日本の社会保険料負担期間を合算することが
できます。
※アメリカ、ドイツ、ベルギー、フランス、カナダ、
オーストラリア、オランダ、チェコ
日本の企業の進出が盛んな東南アジアの国はまだ社会保険の協定は
未整備です。
これから日本の企業進出が加速するだけに、早めに整備してほしいものです。
上記の内容で不明な点があれば、ご連絡ください。