Columnコラム
相続税対策~マンションで節税する?
2011 年 12 月 3 日最近相続に関する相談が増えてきています。
2011年3月にメルマガに相続税の改正について記載しました。
所長コラム2011/03/31
が、今年の改正は相続に関しては、全て見直しとなっています。
基礎控除枠の縮小や最高税率及び税区分の改正は全て先送りです。
いずれ増税になることは避けられないですが、今のところ変更は
ありません。
お間違えの無い様にして頂ければと思います。
今日は相続の質問に絡んで、相続税対策についてお話します。
相続税の節税ということで巷でマンション等を利用して
節税する話を聞いたことはないでしょうか。
現預金で持っている場合と比較して、不動産を購入した場合
どの程度相続税の節税になるのでしょうか。
相続税での不動産の財産評価は実際の取引価額(時価)とは
かなり乖離しています。
相続税の不動産の評価は、
〇土地に関しては、「路線価額」
〇建物に関しては「固定資産評価額」
となっており、時価の70%から80%程度となっています。
また土地は更地(自己所有)に賃貸マンション等を建築すると
相続税の財産評価上さらに20%~30%減額させることが
可能です。
《時価に対する相続税評価額の目安》
時価 相続税評価額
●現預金 100 100
●土地(自分で使用している) 100 80
●土地(自身の土地の上に建物を 100 65
建てて貸し付けている)
●建物(自分で住んでいる) 100 60
●建物(人に貸している) 100 40
時価を100とした時の相続税評価額は、上記からわかるように、
現預金で財産を持っているよりかなり減額できます。
ここで勘違いしてはいけないのが、借入をして自分の土地に
建物を建てると相続税が減額されるという考え方です。
借入金は相続財産から減らすことはできますが、
同時に現預金も増えてしまうので、節税にはなりません。
借入をして賃貸マンションを建てる場合は、投資金額の利回りも
含め、相続だけに限らず多方面に気を配ってください。
さて、湾岸に林立している高層マンションですが、眺望、設備も良く
東日本大震災があったにもかかわらず、価額はあまり下がっては
いないようです。
相続の際、現金でこの高層マンションを購入したら節税に
なるのでしょうか。
〇戸建て住宅の場合
戸建て住宅は相続税法上、土地と建物を別々に評価します。
戸建て住宅の販売価額(時価)は土地と建物の価額合計です。
この場合、販売価額(時価)と相続税法上の価額はそれほど
乖離しません。
〇マンションの場合
マンションはどうでしょうか。
マンションも相続税法上、土地と建物を別々に評価します。
ただマンションの場合は土地は土地の敷地持分(敷地権)と
建物持分(専有部分と共用分の割合)から成り立っています。
マンションは専有面積当たりの単価を相場として価額設定(時価)
しますので、土地の価額と乖離してしまいます。
特に大規模タワーマンションでは、一戸当たりの土地の持分割合が
少ないため、相続税評価額は実際の販売価額(時価)より
ずっと安くなります。
またタワーマンションでは、上層階と下層階では非常に大きな価格差が
あります。
加えて北向き、南向きなど方向によっても価格差が生じて
いるはずです。
ところが、相続税評価(≒固定資産評価)では、階層や向きに
関わらず、たんに面積だけを基準に評価していきます。
そのため、40階南向きの角部屋と1階北向きの同面積の
部屋の相続税評価額は同じなのです。
(専有面積が同じなので、敷地持分割合も同じのため)
ここからわかる様に、新築の大規模タワーマンションで高層階に
不動産を購入した場合は、かなりの節税額が期待できます。
皆さんがマンションに住んでおられる場合は下記の考え方で
相続税評価額が確認できます。
《相続税の財産評価の計算方法》
〇建物の評価
固定資産税の納税通知書に添付されている課税明細書
「固定資産税課税標準額」
この記載の金額は建物の総額となっています。
これに持分割合(床面積に応じた割合)を乗じてみると
建物の相続税評価額が出てきます。
〇土地の評価
マンションが建っている敷地全体を路線価ベースで評価します。
マンションですから何筆かの土地が一緒になっていますが、
宅地の評価は利用の単位となっている区画ごとに評価しますので
マンションが建っている全ての土地を合わせて路線価で評価します。
路線価は昔は税務署内に置かれていた路線価図を基に評価しましたが、
今では国税局のホームページから全国の路線価図を確認
することができます。
この路線価の金額に面積を乗じると、更地の路線価額が
でてきます。
この後借地権、借家権の割合を斟酌すると土地の相続税評価額が
でてきます。
※実際の評価はかなり複雑です。
この概算額に敷地権の割合を乗じると自身が所有しているマンションの
敷地権の相続税評価額が出てきます。
※敷地権の割合は登記簿謄本に記載されています。
上記の建物と土地の評価額の合計が購入されたマンションの
相続税評価額となります。
新築マンションであれば時価と路線価額には乖離差が出てきます。
これが高層マンションになると、眺望・景観・日当たり等も
あいまって、相当額の差が生じてくるはずです。
マンションの時価が近隣の相場で評価されている以上、相続税
評価額とは今後も大きくかけ離れた金額になるのは間違いない
でしょう。
上記からわかる様に、相続財産を全て現預金で持つことは相続税法上は
不利なため、対策を立てて相続に臨んでください。
ただ、長年仕事柄、相続の現場を見ていますと、一番の相続対策は
親族仲が良いことであるような気がします。