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Columnコラム

所長コラム

相続税~役員借入金の取り扱い

2012 年 5 月 22 日

4月までの怒涛の税務調査が終わったと思ったら、
5月は1年で一番数が多い3月決算クライアントの申告です。

日本では会社は3月決算が多いのですが、外資系は12月決算が
多いですね。

いずれにしても、決算期を決める重要なポイントは、1年の中で
売上高(または利益額)の一番多い時期を期首とすることです。

その後の1年間で利益を消し込むことができますから・・

期末に利益が出過ぎて困っている会社は、決算期を変えるだけで
節税になる場合もあります。

ご自分の会社の1年間の利益額の推移を確認してみてくださいね。

 

最近相続の相談が増えてきました。

相続は通常起こるものでは無いので、税務上も盲点を突かれる
場合があります。

皆さんの会社には「親からの借入金(役員借入金等)」は
ありますか?

本日は、自分の「お父さんからの借入金」がある会社の問題点を
お話しします。

 

『前提』

●自分のお父さんが会社に貸し付けた債権(会社側は借入金)が
1,000万円ある。

●お父さんが老齢となり、いつ相続が起こっても不思議ではない。

●会社の業績が下降してしまい、現在はお父さんに1,000万円を
返済できない。

会社がこの様な状態の時に、お父さんの相続が発生してしまうと、
会社には1,000万円の価値の無い不良債権(会社側は債務)が残って
いる事になります。

そして財産評価上はその不良債権に1,000万円の価値があるとして、
相続税が課税されてしまうのです。

相続人である子供たちは、価値の無い1,000万円に対する
相続税を支払わなければなりません。

 

この納税を回避する方法はあるのでしょうか。

〇まず「デットエクイティスワップ」(DES)という方法があります。

これは、1,000万円の借入金を会社の株式(資本)にしてしまうという
方法です。

相続税財産評価上、債権(借入金)は額面(1,000万円)で評価されます。

しかし

上場していない中小企業の株式は、会社の純資産(資産-負債)で
評価されます。

そのため、会社の業績によっては、株式の価値が半額の500万円になる
可能性もあります。

そうすると、相続税法上納税は半分!になります。

が、法人税法上はもう一段ハードルがあるのです。

それは、債権(借入金)の価値が500万円になった場合は、
初めの1,000万円との差額の500万円は返済しなくても良い
債務(収益)となってしまい、

株式の価額(資本)500万円

債務免除益(収益)500万円

この500万円の収益に対して課税されてしまう場合があるのです。

相続税の代わりに、法人税が課税されてしまうのでは、
せっかく債務を株式化した意味がありません。

 

そこでより確実な方法として、

〇「銀行に協力してもらう方法」があります。

上記と同じ前提を繰り返しますが、

 

『前提』

《会社》
お父さんからの借入金が1,000万円がある。

《お父さん》
会社に対して1,000万円の貸付金がある。

ここで、会社か債権者(お父さん)が銀行からお金を1,000万円
借りて債権を株式化(出資)するのです。

 

具体的に見ていきましょう。
(→はおカネの流れです)

●会社が銀行からおカネを借りる方法

1.銀行から会社が1,000万円借りる。

  銀行  →  会社   お父さん
        1,000万円

2.会社はお父さんに対して1,000万円を返済する

  銀行  →  会社 → お父さん
              1,000万円

3.お父さんは、返済してもらった1,000万円を会社に出資する

  銀行     会社 ← お父さん
        1,000万円

4.会社は銀行に1,000万円を返済する

  銀行  ←  会社 ← お父さん
 1,000万円

 

『結果』

 《会社》
  お父さんからの出資が1,000万円増えた。

 《お父さん》
  会社に対して1,000万円の株式がある。

おカネをぐるっと回すだけで債権が株式に代わるのが解ります。

 

次にお父さんが銀行から融資を受ける方法です。

●お父さんが銀行から借りる方法

1.お父さんが銀行から1,000万円借りる。

  銀行 →  お父さん   会社
        1,000万円

2.お父さんが会社に対して1,000万円出資する。

  銀行 →  お父さん → 会社
              1,000万円

3.会社がお父さんに1,000万円返済する。

  銀行    お父さん ← 会社
        1,000万円

4.お父さんが銀行に1,000万円返済する。

  銀行 ←  お父さん ← 会社
 1,000万円

結果は上記と同様で債権が株式化(出資)されています。

 

融資は1日あれば十分です。

リーマンショック後、代表者が会社に貸し付けていた債権が
返済できずに困っている会社は多いと思います。

法人税法上は帳簿に載っているだけの債権(借入金)が、
相続になると課税されてしまうのです。

お父さんには切り出しにくい話と思いますが、いざ相続が発生して
しまっては、相続人が多額の相続税を払うことになってしまいます。

相続は、なるべく早めに対策を立てていく事が必要です。

起こってしまってからでは遅いのが「相続」です。

不明点がある場合はいつでもご連絡ください。