Columnコラム
税務調査の対応について~社員旅行の適正額
2010 年 8 月 17 日最近ある社長から『社員旅行の適正額とはいくらなのでしょうか?』
という質問を受けました。
知り合いの税理士事務所では、幾らでも大丈夫だと言っているとの事。
本当に大丈夫でしょうか?もし税務調査が入った時はどのように
対応してもらえますか?
このような質問が来たため、今回は宮原会計事務所での
税務調査対応の仕方を説明します。
従業員の慰安旅行が「福利厚生費として認められるか」は、
●旅行の目的は適切か
●企画立案は妥当か
●主催者は誰か
●規模・行程は適切か
●従業員の参加割合はどの程度か
●参加者の旅費負担割合
を総合的に勘案して判断するとの考えが税務署側にはあります。
このため、宮原会計では、以下の条件で経費となるか否かを
判断します。
①旅行日数が4泊5日以内(海外の場合は滞在日数)
②旅行に参加する従業員の数が全従業員の50%以上
③不参加の従業員へ手当を支給しない。
④旅先での写真など証明できるものを残す。
⑤社会通念上妥当な金額であること。
①と②については、税務署から指示が出されています。
(所得税基本通達36-30))が、③以下の条件はきちんとした
お達しがあるわけではありません。
社員旅行が「福利厚生費にならない」と採決された、最近の
『判例』は、平成3年から毎年行われた海外への社員旅行で、
1人当たりの金額が高額であることが理由でした。
以下が当該会社の旅行概要です。
時期 行 先 現地泊 費用総額 人数 金額/人
93年5月 シンガポール 3泊4日 230万円強 7名 341千円
94年5月 アメリカ西海岸 3泊4日 400万円強 9名 454千円
95年5月 カ ナ ダ 3泊4日 520万円 10名 520千円
①と②の形式基準については、この案件の場合クリアされています。
③に関しても参加していない従業員へは手当を支給しないことは
確認されています。
④は旅行代理店の旅行日程表のみであったようです。
逆に社員旅行が「福利厚生費として認められた」最近の『判例』は、
平成元年に実施された某会社のタイ(バンコク)への慰安旅行
(1人当たり20万円弱;平成3年7月18日採決)があります。
私たちの事務所では、このように不明な点があった場合は、
まず『判例』を参考にします。
『判例』はグレーな税務調査において、唯一判断のよりどころとなる
資料です。
『判例』の採決内容から、税務署がどのように判断するかの
ガイドラインを説明します。
今回の内容では1人当たりの旅費が10万円から20万円の間であれば、
『判例』をもとに税務署と争うことができます。
ただ、どうしても20万円以上/人で社員旅行を行いたい!
と望まれる場合は、上記の『判例』をまず提示して社長にリスクを
理解して頂きます。
そのうえで、最大限税務署と戦える資料(今回の場合だと①から⑤
までの条件)をなるべく整えることを提言します。
ただ、『できない』と言うのではなく、ダメな理由を説明します。
さらにそれでも社長判断で行う場合は、極力税務署に反論できる様、
お手伝いを行います。
先日22年7月に最高裁で今まで課税が当たり前だった遺族年金に
対する所得税課税が違法の採決が出ました。
これからも税務署側がおかしいと思える判断については、積極的に
反論していきたいと思っています。
※上記の『判例』とは国税不服審判所、簡易裁判所、地方裁判所、
高等裁判所他の「採決例」のことを指しています。