LAMTIP PARTNERS Co., Ltd.

Columnコラム

所長コラム

自己株式の譲渡(金庫株)について

2010 年 9 月 24 日

ようやく暑さも一段落し、秋の気配が漂い始めました。

今週はシンガポールに来ています。

ハブ空港、港湾、金融システムなど政府が成長戦略を担う
(日本とは間逆な(苦笑))国の最近の成長を目の当たりに
してこようと思っています。

 

今回は、自己株式の買い取り(金庫株)についてご説明します。

ほぼ全ての中小企業は上場していません。

上場すると、株価が付き、取引所で売買することができます。

しかし、社長が経営している自身の会社については、自社株を
現金に換えることは非常に難しい問題です。

平成13年に商法が改正になり、金庫株として自社の株式を自分の
会社で買取り、保有することが可能になりました。

また平成18年からは、株主から自己株を強制的に買取ることも
可能な制度が構築されています。

これにより、会社側は、他者が持っている自己株を買取りたい、未上場株を
所有している人は、会社に買い取ってもらいたい、という要望が出始めました。

しかし、税務上はこの自社株の買い取り(金庫株)は色々な
問題を抱えています。

今回、クライアントの役員Aさんから金庫株に関する質問が来ました。

そのため、自分の勤めている会社の株式(自社株)を所有している場合、
どのようにすれば税務上有利におカネに換えることができるかを説明します。

 

まず、前提として、対象となる企業の内容をご説明します。

(以下条件は仮定です)

資本金は、@5万円株を400株発行して設立しましたが、
現在は利益剰余金が貯まって@20万円になっています。

 

『対象企業(未上場)』

〇資本金;2,000万円

〇利益剰余金;6,000万円

〇株式総数;400株

〇出資時原価;@5万円/株

〇株式時価;@20万円/株

Aさんは、株式の時価が@4万円に下がった時に200株自社株を
購入した年収1億円の役員です。

 

『株式所有者A氏』

〇株式取得価額;800万円

〇取得株式数;200株

〇取得価額/株;@4万円/株

〇年間所得;1億円

簡単に言うと、@4万円で購入した@5万円の株が値上がりして
@20万円になっている状態です。

 

●他社もしくは個人に買い取ってもらう場合

株式の取得原価は、@4万円×200株=800万円

株式の売却価額は、@20万円×200株=4,000万円

通常の株の譲渡だと、4,000万円-800万円=3,200万円(売却益)に課税されます。

税額は、

3,200万円×20%=640万円・・・(a)

 

ところが、自社に株式を買い取ってもらう場合は、
売却差額3,200万円の課税が以下の様になります。

 

●自社に買い取ってもらう場合(金庫株)

まず@20万円(売却時価)-@5万円(出資時原価)=@15万円

@15万円×200株=3,000万円・・・1

「みなし配当」と言い、配当課税(総合所得)とされます。

次に、@5万円(出資時原価)-@4万円(取得時原価)=@1万円

@1万円×200株=200万円・・・2

「株式譲渡益」となり、譲渡所得(分離課税)とされます。

 

税額は、

1.みなし配当 3,000万円×50%=1,500万円

2.株式譲渡益 200万円×20%=40万円

※Aさんは年収1億のため最高税率

所得税総額1+2=1,540万円・・・(b)

(b)-(a)=差額900万円

つまり、自分の会社の株式を「他社もしくは他人」に購入してもらう場合の方が、
「自分の勤めている会社に買い上げさせる」場合と比較して、900万円税金が
安いということです。

 

いかがでしょうか。

会社が株を買い取ってくれるからと、自社株を会社に売ってしまうと、
後からとんでもない額の税金を取られてしまいます。

上場企業と異なり、未上場会社が自社株買いを行うときは、
株主の税金問題まで目を配る事が必要です。