Columnコラム
非常勤役員の税務~その1
2011 年 4 月 18 日日本実業出版社の月刊誌『企業実務』2011年5月号
(http://www.njg.co.jp)に『「非常勤役員」の報酬・賞与・
退職金の税務』を執筆しました。
せっかくですので(笑)、2週にわたり、非常勤役員の税務について
説明したいと思います。
中小企業では「社長の奥様」や「老齢の会長」といった親族を
非常勤役員(≒名目的な役員)としているのを多く見受けます。
ところが、税法、会社法ともに非常勤役員の取り扱いについて
明確な規定は無く、給与規定もあいまいです。
そのため税務調査の時に問題となるケースが数多くあります。
今回、次回と非常勤役員の税務処理のポイントや税務調査対策に
ついて解説します。
〇常勤役員との違いは何ですか?
非常勤、常勤役員いずれも会社から経営を「委任」されている存在です。
両者を区分する明確な基準は法律上なく、実態上経営を
行っているか否かで判断します。
〇出社日数・勤務時間の制限はありますか?
非常勤役員に対する出社日数に規定は無く、勤務時間の制限等の
規定も定められていません。
〇非常勤役員になれない人はいますか?
会社法では破産した人などは、取締役になれないと規定していますが、
法人における役員の意義を考えると、物理的に経営に
関われない人は難しいでしょう。
〇非常勤役員に給与手当を支払って大丈夫ですか?
会社にあまり来ない非常勤役員へ給料を払う根拠は、
●経営への関与
●自身が著名な方で、会社にいることで会社の信用性が高まる
●会社が不測の損害が出た場合損害賠償をしなければならない
非常勤役員であっても、会社に貢献している事実があれば
役員給与を支払っても大丈夫です。
〇非常勤役員の報酬額の決め方を教えてください
非常勤役員に対する役員給与の決め方について具体的な基準は
税法上には有りません。実務上は以下の取り決めに依ります。
●形式基準
「株主総会等」で役員報酬の支給限度額が定められ、加えて
「給与規定」による非常勤役員に対する支給基準が定められている
●実質基準
会社の主要な業務執行や意思決定に関与しているか否かが
判断基準として重要となります。
1.取締役会等に出席する
2.人事権をもっている
3.得意先・仕入先の選定権をもっている
4.銀行交渉や重要な契約の決定権をもっている
具体的な取り決めを挙げてみます。
『非常勤役員の就任形態と報酬の考え方』
〇代表者が高齢又は病弱を理由に経営の第一線から退き、
非常勤の役員(会長)に就任した場合
●引き続き代表権を持ち、今まで通り業務執行権を行う、いわゆる
陰の実力者として力をふるっている時は、実質的は職務内容、
会社への貢献度には変化はないので、役員給与も従来通りとなります。
(実態は非常勤役員ではない)
●名目上は代表者であっても、事実上の業務執行権は社長
(後継者)に譲っていれば、それ相応の減額が必要です。
●経営の第一線から全く退き、名目上の役員となった時は、
相当程度の減額をしなければなりません。
〇会社法上の役員の人数を満たすため代表者の家族、
親戚、知人を非常勤役員に就任させた場合
原則的には無報酬です。支給したとしても名目的な金額が無難です。
〇会社の設立に当たり、会社の信用力、泊をつけるため、
著名な人に非常勤役員に就任してもらう場合
会社に対する貢献度により、ケースバイケースで判定します。
報酬額が名目的な金額を超えるときは金額の合理性を
税務当局に説明できるよう準備を行いましょう。
「非常勤役員の給与手当」に加えて、「常勤役員の役員給与」が
高すぎるとして否認される場合の税務上の要件もお伝えします。
〇役員給与(常勤)が高すぎると税務署から指摘される事がありますか?
法人税法では、以下の基準によって判断し、高すぎると
認定されれば部分的に経費となりません。
●実質基準
個々の役員に支給した役員給与の額が、以下の4つの要素を鑑み、
金額が多すぎる場合
1.職務内容や出勤日数
2.会社の収益状況
3.使用人の給料の支給状況
4.同業他社で事業規模が匹敵する会社の役員給与額
●形式基準
議事録により定めている「役員給与の支給限度額」が、
「実際の支給額」より少なかった場合、その超えた部分は
「高すぎる役員給与」となります。
役員給与総額のうち該当する非常勤役員の給与が高すぎるか否かは、
企業における非常勤役員の職務の内容、他の非常勤役員との
バランス等により判断することになります。