LAMTIP PARTNERS Co., Ltd.

Columnコラム

所長コラム

2011年税制改正中、今期決定した法案について

2011 年 8 月 8 日

先日クライアントの社長から、「今年の税制改正は全て成立
しているの?」と質問を受けました。

昨年(2011年)度の税制改正は、民主党が参議員の過半数を確保
できない「ねじれ国会」であったため、年度内の成立には至っていません。

 

その後、継続審議される法案は、一旦「つなぎ法案」で当面をしのいだため、
昨年末の税制改正案が全て施行されるか否かは、余り知られていないと
思います。

が、ようやく6月の国会により、昨年度の税制改正の中で「成立した」
ものが決まりました。

今回は、新しく創設されたものも合わせて、重要な改正を記載します。

 

『成立したもの』

1.法人税の改正

小粒な決定です。重要な法案の方が不成立となっています。

〇中小企業の軽減税率(延長)

特例が延長されています。

課税所得が「800万円」までは「税率18%」となっています。

800万円までは利益を出しても、今まで通り納税額は少なめです。

 

〇試験研究費の特別控除(延長)

特例が延長されています。

 

〇「中小企業の特例」の不適用(グループ税制)(改正)

資本金5億円以上の複数会社(親会社他)に株式のすべてを
保有されている中小企業は下記の「中小企業の特例」が
適用できなくなります。

●軽減税率(18%)

●留保金課税の不適用

●交際費を600万円まで経費とする

●欠損金による還付が請求できる。

親会社に大会社(資本金5億円以上)を持つ子会社の中小企業は
気をつけてください。

 

〇雇用者の数が増加した場合の特別控除(創設)

昨年の改正にはありませんでしたが、新しく創設されています。
納税者有利の改正なので、確認してみてください。

法人税から差し引ける金額=雇用者数×20万円
(中小企業については法人税額の20%限度)

「条件」

●2011年4月から2014年3月までの事業年度

●雇用者数が増加した場合

●中小企業者については2名以上である会社

 

2.消費税

〇免税要件の見直し(改正)

今まで 》2年前の事業年度の売上高が1,000万円未満であれば
     当事業年度は消費税を支払わなくても良かった

これから》●2年前の売上高1,000万円未満

     ●昨年の事業年度前半の売上高が1,000万円未満で
      あること

免税事業者になるには、今までは2年前の事業年度の売上高だけを
確認していればよかったが、これからは昨年度の売上高も
考慮する必要があります。

 

〇仕入税額控除の見直し(改正)

今まで 》消費税法上の課税売上高の割合が95%以上
     (いわゆる95%ルール)であれば、仕入に関わる
     消費税は全額控除することができました。

これから》課税売上高が5億円を超えてしまうと、仕入に
     関わる消費税は全額控除できなくなります。

当年度の売上高が5億円を超える場合は、消費税額が増加する
可能性があるため、注意してください。

 

3.証券税制

〇上場株式の10%課税(延長)

上場株式の配当・譲渡した時の利益に対して10%(所得税7%+
住民税3%)の軽減税率が2013年度末まで延長されました。

 

〇デリバティブ取引の店頭取引(改正)

FX等の取引はクリック365の様な「取引所取引」の場合だと

●申告分離課税(給与等他の所得とは別)

●税率20%

●損失額3年間繰り越し(利益と相殺)

「店頭取引」の場合は、

●総合課税(給与等と合算)

●税率最高50%(所得税+住民税)

●損失は繰越不可(雑所得との間で相殺)

これが、今期の改正で、「店頭取引」も「取引所取引」と一緒の
処理となりました。納税者にとっては有利な改正です。

 

〇金の取引(創設)

金(金貨・金地金)の取引は「支払調書」を提出する事に
なりました。

税務署に取引額を把握されるため、納税者にとっては不利な改正と
なっています。

 

4.贈与税

〇住宅取得等資金の贈与の特例(今年は1,000万円)(改正)

住宅の新築に先行して土地を取得する場合も適用されます。

ただし、贈与の翌年の3月15日までに新築する必要があります。

 

次に、『成立しなかった法案』を羅列します。

1.法人税率

5%引き下げ

 

2.欠損金の繰越控除の見直し

欠損金の控除額減額の見直し(100%→80%)

 

3.高額所得者(役員等)の給与所得控除の引下げ

245万円で控除は頭打ち

 

4.役員退職金の課税額引き上げ

退職所得の2分の1の処理の不適用

 

5.相続税の基礎控除

基礎控除額 5,000万円→3,000万円

 

6.相続税率

2億円を超える金額が増税

 

7.更正の請求

請求期間の延長 1年→5年

 

一度アナウンスは致しましたが、2011年度は不成立となった法案で
重要なものを列挙しました。

全く今年は、専門家泣かせの年です。

 

適用に関しては、慎重に行ってまいりますので、改正に該当すると
思われる処理に関して不明な点がございましたら、いつでも
お尋ねくださいね。